職員室

リレートーク

にちがくの教職員によるリレートーク
~学校生活、そして日常を語り繋ぎます~

2017-08-04

日本学園柔道部は今年、監督が代わり、今まで監督を務められていた万田先生は、総監督として、柔道部の携わってくださっていますが、花田監督のもと、新体制となりました。また、この合宿で三年生も引退、新キャプテン、新チームとなりました。

柔道部は、この夏、金鷲旗・長野合宿を無事に終え、夏の良いスタートを切ることができました。更にこの夏の厳しい練習を乗り越えて、今後の試合に臨みたいと思います。
今後ともご声援をよろしくお願いいたします。

2017-07-26

日本学園高校では、学期ごとに学年全員が同じ課題図書を読み、学期末に各自の読書の深まりについてチェックする「読書テスト」を実施しています。昨年度からの取り組みですが、高校2年生は今までに、ルイス・サッカー『穴―HOLES』、ドリアン助川『あん』、『16歳の教科書』、長谷部誠『心を整える』を読んできました。

高校2年の1学期に選んだ本は、朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』です。内容ですが、バレー部のキャプテンであった「桐島」が突然部活を辞めたことにより、5人の生徒たちの学校生活に影響を与えていく、その5人の姿を描いた「群像小説」です。面白いことに、タイトルに登場する「桐島」は、小説には登場しません。現代の高校生の姿がリアルに描かれており、我らが高校2年生たちがどんな感想を持つか大きな興味を覚え、この本を選びました。

さらに、希望する生徒たちを集め、放課後に「読書会」も開きました。20名ほどが集まり、感想を述べあい、また私の方で、この小説のテーマや仕組みについて解説を行いました。参加した生徒はみな「面白かった」と述べていました。
さらにさらに、保護者の方にも『桐島、部活やめるってよ』の読書会を企画し、実施しました。参加いただいた方は2名と少なくはありましたが、保護者の方の感想や、現代の若者をめぐるお話が聞けて、私自身大変有意義な時間を過ごすことができました。

作中の高校生たちは、学校の中で、「イケているか、イケていないか」「ダサいか、ダサくないか」などの判断の下に、自分がどの位置にいるかを非常に気にします。「スクール・カースト」と呼ばれるものです。この「スクール・カースト」が彼らの言動を不自由なものにさせています。自らを「下」に所属すると考えている映画部の前田涼也は運動が不得意で、体育の授業でみんなに迷惑をかけると「世界で一番悪いことをした」ように感じています。反対に、野球部の「ユーレイ」部員である菊池宏樹は、イケメンで勉強もでき、制服の着こなしもきまっていて、スポーツ万能、さらにかわいい彼女もいます。まさにイケてる高校生で「上位カースト」に位置しています。
しかし、この小説の面白いのは、このカーストが固定されたままではないという点です。映画部の前田は製作した映画によって、「映画甲子園」に出場します。上位カーストにいる菊池宏樹が決して出場することのできない「甲子園」という舞台に立つのです。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、興味を持った方はぜひ読んでみてほしいと思います。
生徒が書いた感想をいくつか紹介したいと思います。


宏樹は野球のユーレイ部員で部活をサボっては竜汰たちとカラオケにいったりしていたが、涼也の部活に対しての思いを見て、何かに夢中になれるということは大切だと思う。自分もとりあえずの学校生活をおくるのではなく、何かに夢中になれるものを見つけようと思った。桐島が部活を辞めて、周りに起きた変化をその人の視点で読むこの本はとても面白かった。スクールカーストや実果の家族などの話を読んで心を揺さぶられた。僕はこの本を読んで一人一人にストーリーがしっかりとあるのだなと思った。桐島が部活を辞めた理由も自分なりに考えてみようと思った。(D組S君)

菊池宏樹の物語で男子と女子の違いや「上」と「下」の違いを客観的に見ているように感じた。そして、前田に話しかける時には、人間は階層で分けられるものでもないと考えさせられた。
自分は中・高、男子校なので、すごく新鮮で衝撃的だった。高校という半分子ども、半分大人みたいな場所は、生徒の関係が複雑に関わっている小さな社会のようにもこの物語から感じられた。共学に憧れつつも男子校で良かったと素直に思える作品だった。(B組H君)

僕は小泉風助の話がとても印象に残っていて、個人的に五つの物語の中で一番良い話だと思います。桐島がバレー部を今まで引っぱってきたのに突然消えてしまって、風助がその時から自分の価値や自分がどういう存在だったのかを気づく描写がとても心にひびいて、もし自分が風助と同じ立場だったらどう考えるだろうなど、たくさん考える事ができたのがとても印象に残りました。
そして、この本全体を読んで、桐島という登場人物全員が印象に残っている一人が突然部活を辞めたことによって、それまであった全員にとっていつもの景色が無くなることによって自分を見つめ直すという感じがして、繰り返し読んでいくたびにとても面白く感じました。(C組O君)


S君の感想にあるように、「全員、一人一人にストーリーがある」という気づきは素晴らしいと思います。そして、そのストーリーは少なからず関わり合っている。「群像劇」であるこの小説が言わんとしていることはまさにその通りなのだと思います。
またH君は、「男子校で良かった」と書いています。男子よりもより強く「カースト」にしばられている女子生徒たちの言動に驚いたのでしょう。H君は中学から日本学園ですから、女子生徒の姿に免疫があまりありません。面白いことに、「男子校で良かった」という感想は多くの生徒が書いていました。日本学園にもおそらく「スクール・カースト」はあるでしょう。しかし、男子校で女子の目を気にしないでいられる部分、そのカーストにしばられている感じはほとんどありません。みんな思い思いに、自分の好きな道に、誰からも干渉されることなく、イケてるとかイケてないなどという他者の目など気にせずに打ち込んでいます。教室では自分の趣味について語っています。本校の学園祭はここ数年、開会式では有志の生徒たちが全力で「ヲタ芸ダンス」をしています。満場の拍手が起こります。ダサいとかダサくないか、なんてことを考えず、自分がやりたいということには思い切ってその情熱を傾ける。そういう姿を見ると私はとてもうれしくなります。
そして、O君の感想、「桐島の不在」によって自分を見つめなおすという指摘にはまさにその通りだと思いました。このO君はこの小説がとても気に入ったらしく、何度も読み直したそうです。読む度に新しい発見をしたそうです。「桐島」という、いつも見慣れた景色を失ったとき、むしろ自分の存在について考え始める。哲学でいう「実存」というやつです。そして恐らく、O君はこの小説を読むという行為の中に、新たな自分をも発見して行ったのではないかと思います。


読書という体験は、それを読むことによって、今まで自分が見ていた世界を新たな世界として見えさせるものだと思います。『桐島、部活やめるってよ』の中には実は「光り」の描写が上手く用いられています。読書こそが生徒の人生を照らす光りに、我々国語教員はそう願ってやみません。


追記
昨日7/25に行われた夏の甲子園予選準々決勝、早稲田実業戦において、2番手投手として登板した2年生のN君は、1年の2学期に読んだドリアン助川の小説『あん』の感想の中で、自分が小学生の頃によくハンセン病の施設全生園の敷地の中で野球をやっていて、その時のことや、ハンセン病の回復者との交流について書いていました。
読書が自分の記憶にもつながり、自分の体験をさらに強いものにするということもあるのだと感じました。昨日の野球部の健闘を称えるとともに、ここに追記させていただきます。

2017-07-20

「人は得意な道で成長すればいい」は、校祖杉浦重剛先生のことば。明日から学園は42日間の夏休み。自分の得意なことに集中してとことん取り組み、力を伸ばすことができる期間です。

この42日間、日本学園では夏期講習が行われていますし、高2・高3では朝から晩まで10時間近くを学校で自学自習に取り組み、自学自習の習慣を身につける一週間もあります。また休みの後半には中学1・2年生は漁業体験へと出かけて行き日本学園ならではの創発学の体験実習をしてきます。さらに多くの部活動は地方へ合宿へ行ったり、普段以上に練習試合が入ったりと自分の好きなことに集中して取り組んでいます。

部活合宿一覧を見ていると、 遠くは岩手からぐるっと新潟を回って日本学園まで自転車で走破する自転車部。バイク・泳ぎ・ランを鍛えるトライアスロン部は山梨で合宿。山渓部は剣岳を目指しての登山。伊豆のちょっと夏には暑い場所での合宿はフットサル部や野球部。関東近郊で標高が高く涼しいところで汗を流して活動するのはサッカー部、バスケット部、バレー部、柔道部、陸上部、テニス部の運動系クラブ。

3.11の後に岩手に慰問に行った吹奏楽部は、今年も再び陸前高田へ慰問に出かけます。好きなことをより深くと鉄道研究部は青春18切符を使って広島へ、スタジオのある宿で思いっきり練習を楽しむ予定の軽音楽部、趣味の世界を広げようと鎌倉で合宿する表象文化研究部。運動部に負けじと文化部も張り切って合宿をしています。

昨年は、合宿をしているクラブを見て回ってきました。普段、学校で活動している姿とはまた違った様子を見ることができました。合宿中にも他校と合同で練習や試合をしているところもあり貴重な経験を積み重ねています。きっと今年も多くの経験を積んで逞しくなってくることでしょう。

さて、あなたはこの42日間をどのように過ごすのでしょうか。夏期講習や部活に参加する人もいるでしょう。スポーツで身体の汗を流すのも良いでしょう。また本を読んだり、好きな科目をとことん突き詰めて見るのもいいでしょう。あるいは短い休みでは行けなところへ出向き見聞を広めてくるのも良いでしょう。

これだけ長期の休みを取れるのは、学生のこの時期しかありません。今この時にしか味わえない貴重な42日間を無為に過ごさないようにしてください。自分の得意を伸ばし今日までの自分から一歩でも二歩でも前に進みましょう。よい夏休みを!

2017-07-18

7月15日、高校2年生対象PTA主催のキャリアガイダンスが行われました。東京都特別区職員・デザインディレクター・保育士・理学療法士・IT企業勤務・税理士、計6名の講師から2名選択し、それぞれ1時間ずつ聴くという進路行事です。

各会場を回って生徒の様子を観察していましたが、失礼な態度をとることなく、興味をもって聴いていたと思います。講師の先生に対しての質問も積極的にしており、彼らがそれぞれの職業について深く理解することができたのではないでしょうか。

講演終了後に生徒たちが書いた感想文を読んでみても、話を聴く前と後では、その職業に対するイメージが変化したり、新たに学ぶことがあったことが書かれていました。

高校生にとってなじみのある職業というと、実はそんなに多くないように思います。面談などで将来の希望を尋ねると、親が就いている職業か学校の教員が以外と多いです。普段長い時間接する大人が限られているというのが背景にあると思いますが、今回のような行事を通して、世の中には様々な職業があり、それらが社会を支えていることをまずは認識できたのなら、開催した意味があると思います。

今後の進路を決定する上で、今回の行事が生徒にとって参考になればうれしい限りです。

2017-07-14

高校2年生は、7月10日(月)にパシフィコ横浜で行われた『マイナビ進学FESTA』に行って来ました。行きは明大前から会場までバスだったので、車内は旅行のような楽しい雰囲気で、本来の目的を忘れてしまっているのではないかと心配になりました。

会場に着くと、他校からも多くの高校生が集まって来ており、普段は目にしない女子高生もいるなど、賑わっていました。広い会場内には、学校ブース・企業ブースが多数あり、社会人アドバイザーの方もいました。会場内は自由行動で、それぞれが、自分の興味・関心に合ったブースを探して、歩き回りました。大学のブースでは、人気のところには行列ができており、生徒達もその列に並びながら真剣に話を聞いていました。企業のブースでは、自衛官や新聞社など、普段は聞けないような話を興味深そうに聞いている生徒の姿がありました。でも、生徒の中には恥ずかしがりやもおり、中々お目当てのブースに着席できずに、その前をウロウロしている様子も見られました。最終的には先生の力を借りて、話を聞くような場面もあり、担当の人も苦笑いでした。

大学は3校以上、企業・社会人は2社(名)以上に話を聞こうというのが、学年としての課題になっていたので、時間ギリギリまで話を聞いている生徒や、一旦解散になった後に、もう一度会場に戻って話を聞くような生徒もいました。

今回のマイナビで学問や職業についての情報を少しでも多く得て、自分の進路に活かし、将来に繋げてほしいと思います。2年生は、いま、自分の進路を考え、向き合う時期です。そして、今後はその達成に向けて精一杯の行動を起こすしかありません。一丸となって頑張っていこう、2年生!

2017-07-11

7月10日(月)、高校1年A組の生徒たちが、日本学園の近くにある明治大学和泉キャンパス図書館を訪問しました。初めに明治大学の図書館担当の方がプロジェクターを使って図書館について説明して下さり、その後、生徒たちは3グループに分かれて館内を見学しました。勉強したり議論したりしている大学生たちの姿に接して、生徒たちはいろいろと刺激を受けたようです。

見学後、生徒たちに感想を聞いてみたところ、室内の色調や照明の具合なども利用者が本を読みやすいように工夫されていることに感心したとのことでした。また、和泉図書館だけで37万冊の蔵書があるということにも驚いたようです。以下は生徒たちの感想文からの引用です。

「図書館全体のデザインがとてもきれいで、日光の取り入れ方や空調の工夫がされており、学生のことを考える姿勢が伝わってきて、そういう心遣いも大切だということを学びました。」

「明治大学の図書館では学生が利用しやすいように様々な工夫がされていた。例えば、1・2階では生徒たちがディスカッションできるようになっていて、3・4階では落ち着きのある雰囲気で集中して勉強できると思った。様々な学生の使用法に応えられる図書館だった。」

「今回、明治大学図書館に行って、大学生にとって図書館が大切な場所だということが分かった。普段の勉強から専門的な文献を使うことが重要だということがわかった。」

「学生が快適に過ごしやすいように、椅子や机の形や色の工夫をしていた。この図書館に37万冊の本があることにとても驚いた。あらゆる所に工夫がしてあって、見学していて楽しかった。」

「何といっても本の種類が豊富で、自分の知りたいこと、調べたいことがすぐに分かる環境はうらやましいと思った。疲れにくい構造のイスやリラックスできる空間や雰囲気など、充実していて利用しやすい印象だった。」

大学はいうまでもなく学問研究の場です。したがって大学の図書館は規模も大きく、なかなか読むことのできない貴重な文献が所蔵されています。私も図書館が好きな人間で、学生時代はよく図書館に行って一日を過ごしたものです。夏目漱石の小説『三四郎』には、熊本から上京して東京帝国大学に入った三四郎が、大学の図書館で「どんな本を借りても、きっと誰か一度は眼を通しているという事実」を発見して驚かされるという場面があります。そして、誰も読んでいないはずだと思って本を開いたところ、すでに鉛筆で書き込みがしてあるのを見つけて「これはとうてい、やり切れない」とショックを受けます。生徒諸君も将来大学に入ったら、まずは図書館に足を運んで、読書の広大な世界を味わってほしいです。

もちろん日本学園にも図書室があります。大学に比べれば規模は小さいですが、それでも2万冊を越える
蔵書があります。生徒諸君は本校の図書室も大いに利用して、たくさんの本と出合ってください。

2017-07-08

中学校では、体育祭での創作ダンスもおわり、次の行事「文化祭(日学祭)」に向けて、創作劇作りに各学年、静かな緊張感の中、脚本制作に励んでいる。

日本学園中学校では、文化祭(日学祭)で、校外学習での研究発表と、創作劇を必ず発表するのが恒例となっています。

この創作劇は、中学校1年生の時、担任の先生と一緒に作っていくようではありますが、毎年この1年生の演劇を経て、演劇の面白さに気づく生徒、演じる面白さに気づく生徒が出てきます。

そして2年生になると、1年生の時、演劇の面白さに気づいた生徒が、クラスを引っ張ってもっとレベルの高い劇に挑戦し始めます。

そして3年生になると、2年生の頃行った演劇の反省を活かしながら、より高みを目指してついには担任の入り込む余地がなくなってきます。生徒は「いや、先生僕たちでやります」と。
そんな風に真剣なまなざしで言う生徒が誇らしくもあり、少し私も一緒に作りたいよ…という感じの若干の寂しさもありますが、彼らの成長を実感する瞬間でもあります。

生徒たちはそれぞれ、本校の表彰文化研究部(詳しくはHPで活動報告をご覧下さい)を利用したりしながら、大学生の演劇を見に行ったりして感覚を磨いています。

これは、生み出す楽しさを知っているからこそ、研究も前向きに取り組むことができる。生み出す楽しさの味をしってしまったからこそ、熱くなれる。私は、これこそ豊な学びの基本的な姿勢だと、この時の彼らを見ていていつも思います。

今年も彼らの演劇が楽しみです。日本学園文化祭(日学祭)をどうぞよろしくお願いいたします。

2017-07-05

梅雨の季節、雨の日が続いています。

この時期は気圧の変化によって、頭痛や頭重感、頭がぼーっとしたりお腹の調子も優れなかったり、風邪をひいたりする人が増える傾向があるようです。日本学園でも体調を崩している生徒が増えているようで、保健室への来室者も増えています。私たち人間も自然界の一部なので、実は気圧の変動や天気など外気の影響を大きく受けているものなのです。

そして、体の不調を引き起こすような湿気のことを、東洋医学では「湿邪」というそうです。低気圧や湿気で浮腫むことで血行が妨げられてさまざなま症状となるという考え方のようです。そこで、「湿邪」に負けない梅雨の過ごし方を考えてみましょう。

まずは、そもそも体を湿気に晒さないということ。除湿器や市販の乾燥剤なども使って室内の湿度を40〜60%に保つようにするといいようです。

次に、体内にある余分な水分を汗や尿で排出しやすい状態にしましょう。唐辛子やカレー粉は発刊を促す作用があります。しょうが・ネギ・ニラ・ミョウガ・大葉など、この時期の香りの高い野菜は消化力を高め代謝をあげます。冷たい飲み物などは体を冷やすことになるので取りすぎには注意を。

3つめは半身浴です。夏はついシャワーだけで済ませてしまいがちですが、ぬるめの半身浴はリラックス効果もあり、自律神経を整え、ストレスや痛みなども軽減してくれます。

雨が続く季節ですが、気分良く乗り切っていきましょう。

2017-07-01

「時間・時」というものを考えていくと、大きく二つがあるかもしれません。1分1秒と一定方向に流れていく「時」と、主観的で内面的な「時」(タイミング)です。

刻々と流れていく時のなかで、どのタイミングでおこなっても結果や効果に全く差し支えない事柄もありますが、一方で同じことをしても特定のタイミングで行わなければ効果がなかったり、逆に不利益を被むったりする事柄もあります。

この梅雨が明けると「暑い夏」がやってきます。仲間と共に切磋琢磨しながら、勉強にスポーツに徹底的に打ち込める「熱い夏」です。(その前に定期試験ですが)
「暑い夏」は来年も同じく訪れますが、それぞれの「熱い夏」はただ今年限りです。

日本学園の生徒が青春を燃やせるよう全力でサポートしていきたいと思います。

2017-06-28

図書室に続く廊下に、日本学園の歴史をまとめたボードが並んで掲げられています。ボードには校祖・杉浦重剛先生についての記述も載っているのですが、先日ふと疑問がわきました。
「杉浦先生を東宮御学問所御用掛に推薦したのは誰?」
倫理を担当したことはいろいろな資料に書いてあったのですが、適任者として杉浦先生を推したのは誰か分からなかったので司書らしく調べてみました。

まず、最近発行された『昭和天皇実録 第二(東京書籍)』を読むと、大正3年5月4日に「(引用開始)本月二十三日には日本中学校校長杉浦重剛が倫理担当として東宮御学問所御用掛に任じられ(引用終了)」という記述で初めて名前が登場します。倫理と外国語以外の御用掛の名前は4月に登場しているので、決まるまで時間がかかったようです。

一方『杉浦重剛全集 第六巻(杉浦重剛全集刊行会)』の「致誠日誌」から杉浦先生の日記をみると、5月15日に御用掛任命の話を浜尾男爵に言われて「(引用開始)一両日返答ノ猶予ヲ請ヒ(引用終了)」としているので、とても急な話だったことがうかがえます。
よって杉浦先生を御用掛に決めた東宮御学問所の中心人物が記録を残していれば何か分かるかもしれないと思いネットで検索してみたところ、それらしき本を見つけました。

それは昭和10年に発行された『花ふゞき(三幸堂書店)』という本で、著者の小笠原長生は東宮御学問所の幹事です。さらに東宮御学問所総裁東郷平八郎の部下でもあります。つまり探していた当事者が書いた本です。タイトルからして回想録の匂いがぷんぷんします。

本の内容は、国立国会図書館デジタルコレクションで読むことができました。この本の「御進講当時の杉浦重剛先生」という章に、「杉浦先生抜擢の経緯」という節がありました。

著者は文部省の教科書委員をしていたときに、同委員の山川健次郎博士に「(引用開始)此の会に杉浦を入れないといふ事は甚だ間違ってゐる。どうしても杉浦は缺くべからざる人である。(引用終了)」と言われたのがきっかけで杉浦先生のことを覚えていたようです。

山川健次郎は著者と同じく東宮学問所の評議員となり御用掛を決める側になりましたが、これだけでは山川が御用掛に杉浦先生を推薦したという証拠にはなりません。

ほかに記述がないか目次を見ると、「フロツクコートを着た乃木将軍 山川男」という章があり、山川健次郎のことかと思って読んでみると、「東宮御学問所評議員としての山川男」という節に「(引用開始)倫理の御進講は杉浦重剛氏が任命せられたが、之を第一に推挙したのは山川男であった。(引用終了)」とありました。よって倫理の御用掛に杉浦先生を推薦したのは山川健次郎で確定しました。

ちなみに山川は会津藩の白虎隊の生き残りで、理学博士となり東京帝国大学の総長をつとめた人でもあります。杉浦先生と年齢も職場も近かったようですが、以前から交流があったかは調べきれませんでした。

おまけで杉浦先生は山川健次郎が自分を推薦したことを知っていたのか?を調べてみました。任命された大正3年5月の記録をさがすと、『杉浦重剛全集 第五巻』の「天台道士語録【前編】」に、「(引用開始)伊東知也が来て、『此度先生を推挙したのは大隈でせうか。若し其れならば、国民党を脱して、大隈を助けたいとも思ひますが、真実の消息は如何なものでせうか』と云ふから、予は答へて、任命のあった日に、大隈さんへも挨拶に行くべきものかと浜尾君に聞いたところが、浜尾君は『此の事は少しも大隈に関係の無いことだから其れには及びますまい』、といふ事であつたと話してやつたよ。(引用終了)」と杉浦先生本人が話したという記述がありました。大隈というのは大隈重信のことで、第二次大隈内閣が4月から始まっていることから、推薦に関わったのでは?と思ったようです。よって、杉浦先生は少なくとも任命されたときは誰が推薦したかは教えられなかったと推測できます。

ちなみに『花ふゞき』の「御進講当事の杉浦重剛先生」では、エピソードがいくつか載っていました。個人的には沼津の松原で東郷元帥と杉浦先生が密談をしていて、著者の小笠原長生が二人は国の重大なことについて話していると思っていたら、実際は東郷元帥が(お菓子の)パイを褒め、杉浦先生が羊羹の方がいいと答えるなどの食べ物の話ばかりしていた…という話が面白かったです。

国立国会図書館デジタルコレクションでは、インターネットができる環境であれば以下のアドレスから「御進講当事〜」などを読むことができます。ぜひ読んでみてください。
御進講当事の杉浦重剛先生
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1225608/136

東宮御学問所評議員としての山川男
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1225608/135

参考・引用文献
明治教育史研究会編『杉浦重剛全集 第5巻』杉浦重剛全集刊行会,1982年
明治教育史研究会編『杉浦重剛全集 第6巻』杉浦重剛全集刊行会,1983年
宮内庁『昭和天皇実録 第二』東京書籍,2015年
小笠原長生『花ふゞき』三幸堂書店,1935年
新潮社辞典編集部編『新潮日本人名辞典』新潮社,1991年