職員室

リレートーク

にちがくの教職員によるリレートーク
~学校生活、そして日常を語り繋ぎます~

2017-01-20

文学散歩のススメ 『こころ』上野〜小石川 大森先生(高2担任・国語科・映画研究)

高校2年生は3学期に夏目漱石の『こころ』を扱います。
静かな空間で本とじっと向きあうのも読書の楽しみですが、作品の舞台に出かけてみるというのもまた一興です。アニメや漫画でいうところの「聖地巡礼」の小説版ですね。

というわけで、今回は上野公園から小石川へ散歩しました。
上野公園は、〈先生〉が「精神的に向上心のないものは、ばかだ」と言って〈K〉を打ちのめした場所。二人はそこから小石川の下宿先まで口を聞かずに帰ります。
そんな二人の心中に思いを馳せながら、その帰路をたどりました。

【上野公園〜東京大学】
上野公園を出た後は、せっかくなので二人の通った東京大学(帝国大学)を抜けていくことに。
キャンパス内には、同じ漱石作品から呼び名がついた「三四郎池」があります。正式な名称は「心字池」で、その名のとおり、心という字をかたどって造られました。
漱石は帝大の出身です。至極当然、心字池の由来は知っていたでしょう。『こころ』を執筆するにあたって、漱石はこの風景に何を見たのでしょうか。
都会の喧噪にあって時間が止まってしまったように静かなこの空間は、思索にふけるにはもってこいです。吹きぬける冷たい風が私の頭を研ぎ澄ませてくれました。(アメ横で抹茶ソフトを食べたの失敗だったかな…)

【東京大学〜後楽園】
東京大学の赤門を出て、本郷三丁目駅の方向へ。
春日通りに出たら、そこからずっと直進です。後楽園へ向かって真砂坂を下っていくことになります。『こころ』には「小石川の谷へ下りたのです」と書かれていますが、まさにその通りですね。
上野公園で〈K〉の恋路を遮り、〈K〉をやり込めた〈先生〉は、ここでようやく「体の温かみを感じだした」そうです。勝利した気分で安堵感を得ている〈先生〉ですが、その場所は谷の下。本人は気づいていないけれど暗い未来が暗示されていたのかもなと思うと、私は深いため息がこぼれるのでした。(ああ、真砂坂上にある美味しいハンバーガー屋へ久しぶりに寄れて本当に幸せ…)

【後楽園〜伝通院】
真砂坂を下った後、今度は冨坂をのぼって伝通院へ向かいます。後楽園のあたりは本当に谷なのだと実感しますよ。
二人の下宿先は伝通院の辺りだと考えられます。漱石自身もこの辺りに下宿していた経験をもちます。そのため、『こころ』のほか『それから』などにも伝通院は出てきますね。
もともと徳川家の菩提寺であった由緒正しきお寺です。本校の創立者である杉浦重剛先生もこちらに永眠しています。
パワースポットの類いは信じていない私ですが、こういう場所を訪れると、自らの来し方、行く末について自然と思いをめぐらせてしまいますね。(うーん、お腹いっぱいだけどやっぱり東京ドームシティでエビ料理を少し食べて帰ろうっと!)


さて、実際に歩いてみたところ、およそ50分(食事の時間含まず!)。なかなかの距離でした。それだけの間、〈先生〉と〈K〉がほとんど口を聞かなかったというのは、やはり事態の深刻さが表われていますね。
この場面の〈K〉の心中は本文に書かれていないので、この日は主に〈K〉の心中を慮りながら歩いてみました。東京の地理も頭に入りますし、良いものですよ。(美味しいものも沢山ありますしね!)
最近は、「Ingress」や「ポケモンGO」などスマホを片手に散歩がブームとなっていますが、本を片手に文学散歩もいかがでしょうか。かしこまらずに軽い気持ちでお出かけください。