職員室

リレートーク

にちがくの教職員によるリレートーク
~学校生活、そして日常を語り繋ぎます~

2017-03-31

「純粋な心に」小岩校長

子供の頃は、よく走り回って遊び、転んで擦り傷を作っていました。傷口から少し血がにじんでいる状態で家に帰ると、母が真っ赤なアカチンという薬を塗ってくれたものです。膝小僧を擦りむいた時などは、黒く瘡(かさ)蓋(ぶた)ができて治りかけているのに赤く塗った薬のあとが、いつまでも取れないのでなんとなく恥ずかしかったことを思い出します。小学校に入ると、同じ傷でも養護の先生が、黄色い消毒液を付け、ガーゼを丁寧に切って当て、白い綿テープで止めてくれました。このときは、何となく誇らしげに歩いていたような気もします。

手や足に付いた擦り傷などは、すぐに治ってしまいますが、それが心だと傷が目に見えないので、簡単にはいきません。だからでしょうか、なるべく心に傷を受けないように、自己防衛本能が働き、強く反発して回避することもあるようです。それでも簡単に傷ついてしまうこともあるので、難しい問題です。

物事を真面目に考えて、真剣に取り組む人が、ちょっとしたことで心に受けた衝撃をいつまでも取り除くことができずに悩んでしまっていることが多いように思います。

たとえが違うかもしれませんが、油のついた手で物を持っても滑りやすくて、しっかり握っていても落としてしまうことがあります。これは、手と物の間に薄い油の層が作られて、摩擦抵抗を小さくする働きがあるからです。同じように、空気中を飛ぶ球の抵抗を少なくする方法に、ディンプルという凹みを球の表面に多く作る方法があります。この表面にある凹みは、空気に凹みがぶつかると、入って出る空気の流れがいくつもでき、球全体を薄い層で囲んでくれます。空気と球との間に、この乱れた薄い空気の層が油のような役目をして、空気抵抗を小さくしてくれるのです。完全な球体をしたものより、小さなへこみが多くついている方が、空中を飛ぶのに抵抗が小さくなるから適しているのです。

ビリヤードで使う球のような硬い球もいいのですが、空気中を飛ぶときには、少し表面に凹みや縫い目(野球で使う球にある)があったものの方が、抵抗が小さく動きを容易にしてくれます。心と球は違いますが、比較して考えてみたらどうでしょうか。心には、凹みもないでしょうが、ちょっとしたことで傷ついて凹みを作ったと考え、この凹みをディンプルと思えばいいのです。多くのことで傷つき折れそうになっても、それらが相互に働き、今後を妨げる抵抗の潤滑油のような作用をして、より強い気持ちにしてくれるのです。
新しい世界に出て、多くのことで心が折れ傷ついたとしても、その経験が新しい潤滑剤となり、前進する力を助けてくれることでしょう。体に受けた外傷は、比較的簡単に治すことができても、心の傷は大変です。自ら傷つくのを避けるのではなく、怖がらずに進み、積極的に活動してみたらどうでしょうか。心の傷は、縫い目やディンプルの働きと同じように、受ける傷の数だけ衝撃を弱めて、小さなものに変えてしまうのです。

卒業する皆さんの純粋な心は、傷つきやすいものでしょうが、純粋だからこそ傷の受け止め方次第で、もっと強くなれるのです。これからの君達をいつまでも応援しています。